2021/07/11

お墓参りが思い出になるとき

yotsu
※このエピソードは、霊園ガイドサイトの開設1周年記念として募集した「お墓のエピソード」の作品です
(出典→....>外部リンクへ)。

わが家のお墓参り

わが家はおそらく、お墓参りがそう身近にあった訳ではありません。

都心に母方の祖父母が眠るお墓があって、法要のときや、不定期にお参りしていた記憶はありますが、特にお盆やお彼岸だからという恒例行事ではありませんでした。

私が10歳のときに祖父が亡くなり、当時は一緒に暮らしていたので記憶もしっかりあり、それからは、おじいちゃんのお墓=私のお墓参りの対象でした。

そこは便利な立地にあるため、なにかついでがあれば寄ることができる、いつでも行けるお墓でもありました。

そうなると逆に機会がないと行かないもので、社会人になり忙しくなってからはずっと、お墓とは縁遠い生活を送っていたように思います…。

もうひとつのお墓

もうひとつ、母方のお墓が小平霊園にあることは、だいぶ後になってから認識しました。

2017年4月、母から「小平のお墓参りに連れて行って欲しい」と頼まれました。当時、家にこもりがちな父を連れ出したかったこともあったのでしょう。母が免許を返納していて、気軽には行けなくなっていたようです。実家からは30〜40分程度で行くことができます。

ならば、休日にドライブがてら、娘も連れて、小平霊園へ行くことに。

とはいえ、ほとんど馴染みがないお墓だったので、(誰が入ってるんだっけ?)というひどい状態。道中改めて確認すると、母の父方の祖父母、つまり私からみると曽祖父母と、20歳で亡くなっていた母の兄の分骨も納められているということでした。

なるほど、私が会ったことのない親族たちです。幼い頃もきっと参ったことはありますが、ほとんど記憶がありませんでした。ごめんなさい。

小平霊園の開放感

4月末の小平霊園はご覧の通り、新緑が美しい!


小平霊園

公園墓地というだけあって、きちんと整備され、走りだしたくなる雰囲気。お墓は怖いもの、なんてイメージとは程遠いですよね。娘はスキップしながら、おじいちゃんを追いかけています。

そしてなんだかとても広い!都心のお墓は狭っこいのですが、ここは数倍、3m×4m=12㎡の区画です。墓石が小さく見えてしまいます。


小平霊園

背後には西武新宿線が走るのが見える場所です。

最近知ったのですが、現在の小平霊園の新規使用料は、一般区画で㎡単価875,000円。ということは……×12?!

昭和39年に祖父が入手したこのお墓、とても貴重なのだと知りました。 (今は1.85㎡〜最大で6㎡での募集しかありません。)

お墓参り、なにをする?

お墓参りの目的は、雑草とりとお掃除がメインになります。

都心のお墓は寺院墓地なので墓石まわりだけでよいのですが、こちらは広い区画なりに、責任を持って自主管理せねばなりません。あまりに雑草が生い茂ると、管理事務所から電話がかかってくるそうです。

ちゃんと手伝ってるおじいちゃん。だいぶぎこちないけど。


小平霊園

せっせと雑草を見つける娘(当時7歳)。


小平霊園

そしてこの日のとっておきの1枚。 (厳しい娘の肖像権を考慮するとこんなことになってしまうのですが……)


小平霊園

手桶とほうきを持って張り切った様子の子、おばあちゃんと一緒にニッコニコです。背後にくわえタバコで、おどけて見せるおじいちゃんという構図。 この一枚があって、本当によかったと思えます。

私はこのとき、しっかり墓碑を確認して、ご先祖に想いを馳せることができましたし、もちろんお線香をあげて、お参りもしましたよ。

お墓参りがくれたもの

このお墓参り、振り返ると私と娘、おじいちゃんとおばあちゃんにも、とても良い思い出をくれたんだと思うのです。

お墓参り自体そんなに行ったことのなかった娘は、お墓というものも、誰が眠っているのかも、説明は聞いてもぴんと来てなかったでしょう。 よく分からずも、珍しい祖父母とのお出かけが、初めて訪れる開放感ある場所で、なにやらやるべきタスクがあって、一緒にやったことが楽しかったのなら、それでいいと心から思えます。

この約2年後に、おじいちゃんが別のお墓に入ることになる一連の流れを経験したから、今ならもう少しお墓の意味が判っているはずです。そうして、経験しながら覚えていくのでしょう。私自身もそうだったように。

結局のところ、お墓参りは家族をつなげるきっかけであって、未来への種まきなのかもしれません。 命のつながりは目に見えなくても、この場所があるから体験できることがあり、故人のことは直接覚えていなくても、母を通じて存在を感じられる場所でした。なんなら父方の祖先にも想いを馳せちゃうわけで。

娘もときが来たら私のようにこうして思い出し、記憶がつながって、命がつながっていることを再確認できるのではないでしょうか。 いずれ娘が刈り取るときのために、記録できてよかったな、と思います。

写真も、今やなくてはならないものです。私自身も忘れてしまっていたこと、思い出すきっかけになりました。何気ない姿を、しっかり撮っておきたいですね。

伝統的な供養行事なんてぜんぜんできてないけれど、わが家なりのお墓参り、なるべく機会を作って、つなげていく役目を担っていきたいと思います。(お墓参りの思い出はシリーズ化できちゃうかも?)